支給開始年齢の引上げ、給付水準適正化等(平成 12 年改正)
平成 11 年当時、我が国では、先進諸国に例をみないほど急速な少子・高齢化が進んでいました。合計特殊出生率は、平成7年には 1.42 まで低下しており、平成 11 年財政再計算において用いられた将来推計人口(平成9年推計)において、中 位推計の将来の合計特殊出生率は、前回推計よりさらに低い 1.61 とされていました。
また、平均寿命も伸び続けており、将来的には 65 歳以上人口が総人口に占める割 合は3割を超える見通しとなっていました。一方、経済は実質マイナス成長に落ち込 んだ時期もあり、賃金上昇率や物価上昇率も低水準にあったため、少子・高齢化 が進み、経済の成長基調が変化する中で、将来の現役世代の負担はより重くなっ ていくことが想定されていました。
そこで、給付と負担のバランスを確保しつつ、将来世 代の負担を過重なものとしないように改正が行われることとなりました。将来世代の 負担の上限としては、厚生年金の保険料率 20%(総報酬ベース)が一つの目安とされました。 また、この改正においては、将来世代の保険料負担を緩和するため、基礎年金 への国庫負担については、安定した財源を確保しつつ国庫負担割合の2分の1へ の引上げを図ることとされました。
しかし、実際には、平成 16 年改正を経て、さらに その後に国庫負担割合を引き上げる法律改正を平成 21 年に行ったことによって、 平成 21 年度から国庫負担割合の2分の1への引上げが実現することとなりました。厚生年金については、報酬比例部分の給付水準が5%適正化され、また裁定後 の年金額は賃金再評価を行わず物価スライドによって購買力を維持することとされました(しかしながら、賃金再評価を行った場合の年金額の8割は保証されるもの とした)。
さらに、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢を男子については平成 25(2013)年度から平成 37(2025)年度にかけて、女子についてはその5年遅れで、 65 歳に引き上げることになった。また、月給と賞与に同一の保険料率を適用する 総報酬制が導入され、育児休業期間中の保険料については事業主負担分も免除さ れる等の改正が行われました。 国民年金については、保険料の半額免除制度、20 歳以上の学生の保険料の納付 猶予・追納制度の新設等の改正が行われました。
老齢年金の基本設計(平成 12 年改正)
基礎年金;年金額=804,200 円×加入年数/40 年
厚生年金;年金額=基礎年金+平均総報酬(再評価後)×5.481/1000×加入月数