呼吸器疾患の障害

主な傷病


肺結核  肺気腫  気管支喘息  慢性呼吸不全  慢性気管支炎  

膿胸  肺繊維症  間質性肺炎  じん肺

1 認定基準


呼吸器疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1 年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたり安静を必要とする


病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1 級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2 級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3 級に該当するものと認定する。


また、呼吸器疾患による障害の認定の対象は、そのほとんどが慢性呼吸不全によるも
のであり、特別な取扱いを要する呼吸器疾患として肺結核・じん肺・気管支喘息があげ
られる。

2 認定要領


呼吸器疾患は、肺結核、じん肺及び呼吸不全に区分する。


A 肺結核


(1) 肺結核による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定する。


(2) 肺結核の病状による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、排菌状態(喀痰等の塗抹、培養検査等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定する。


(3) 病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおり
である。

(4) 肺結核に他の結核又は他の疾病が合併している場合は、その合併症の軽重、治療法、従来の経過等を勘案した上、具体的な日常生活状況等を考慮するとともに、総合的に認定する。


(5) 肺結核及び肺結核後遺症の機能判定による障害の程度は、「C 呼吸不全」の認定要領によって認定する。


(6) 加療による胸郭変形は、それ自体は認定の対象とならないが、肩関節の運動障害を伴う場合には、「 上肢の障害」として、その程度に応じて併合認定の取扱いを行う。


(7) 「抗結核剤による化学療法を施行しているもの」とは、少なくとも2 剤以上の抗結核剤により、積極的な化学療法を施行しているものをいう。

B じん肺


(1) じん肺による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定する。


(2) じん肺の病状による障害の程度は、胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定する。


(3) 病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおり
である。

(4) じん肺の機能判定による障害の程度は、「C 呼吸不全」の認定要領によって認定する。





C 呼吸不全


(1) 呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2 分圧と動脈血CO2 分圧が異常で、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態をいう。


認定の対象となる病態は、主に慢性呼吸不全である。


慢性呼吸不全を生じる疾患は、閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎等)、拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺等)、心血管系異常、神経・筋疾患、中枢神経系異常等多岐にわたり、肺疾患のみが対象疾患ではない。


(2) 呼吸不全の主要症状としては、咳、痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れ等の自覚症
状、チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症等の他覚所見がある。


(3) 検査成績としては、動脈血ガス分析値、予測肺活量1秒率及び必要に応じて行う
運動負荷肺機能検査等がある。


(4) 動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の異常の程度を参考として示すと次のと
おりである。


なお、動脈血ガス分析値の測定は、安静時に行うものとする。


(5) 呼吸不全による各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおり
である。



A表 動脈血ガス分析値

区分

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

動脈血O2 分圧

Torr

7061

6056

55以下

動脈血CO2 分圧

Torr

4650

5159

60以上

   

(注)病状判定に際しては、動脈血O2 分圧値を重視する。

B表 予測肺活量1秒率

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

予測肺活量 1秒率

4031

3021

20以下

   


(6) 呼吸不全による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。


一般状態区分表

なお、呼吸不全の障害の程度の判定は、A表の動脈血ガス分析値を優先するが、その他の検査成績等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

慢性気管支喘息については、症状が安定している時期においての症状の程度、使用する薬剤、酸素療法の有無、検査所見、具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定することとし、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

(注1) 上記表中の症状は、的確な喘息治療を行い、なおも、その症状を示すものであること。
また、全国的に見て、喘息の治療が必ずしも専門医(呼吸器内科等)が行っているとは限らず、また、必ずしも

「喘息予防・管理ガイドライン2009(JGL2009)」に基づく治療を受けているとは限らないことに留意が必要。


(注2) 喘息は疾患の性質上、肺機能や血液ガスだけで重症度を弁別することには無理がある。このため、臨床症状、治療内容を含めて総合的に判定する必要がある。


(注3) 「喘息+肺気腫(COPD)」あるいは、「喘息+肺線維症」については、呼吸不全の基準で認定する。


(8) 在宅酸素療法を施行中のものについては、原則として次により取り扱う。


ア 常時(24 時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3 級と認定する。なお、臨床症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、在宅酸素療法を開始した日(初診日から起算して1 年6 月以内の日に限る。)とする。


(9) 原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患については、前記(4)のA表及び認定時の具体的な日常生活状況等によって、総合的に認定する。


(10)慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じているものは3 級と認定する。なお、治療及び病状の経過、検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。


(11)慢性肺疾患では、それぞれ個人の順応や代償という現象があり、また他方では、多臓器不全の病状も呈してくることから、呼吸機能検査成績が必ずしも障害の程度を示すものとは言えない。


(12)肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。


 

 

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